太陽光発電コラム

今後の太陽光発電~発電事業主の義務と責任~

2017.03.27

固定価格買取制度の施行から、多くの事業者さんが太陽光発電事業に乗り出しました。
グリーン投資減税、生産性向上設備投資促進税など、太陽光事業の発展を推進させる優遇税制などもあり、コストを抑えて高い利回りを得られる安全な投資として、個人事業主の方も増加しています。
当協会でも、2014年5月に掲載した『個人事業主?副収入?太陽光発電事業はどちらで行うべき?』にて、サラリーマンの方でも簡単にできる投資としてお勧めしてきました。

しかし2017年現在、この見方が変わりつつあるのが現状です。
2017年4月から施行される改正FIT法によって、太陽光発電は必ずしも簡単な事業とは言えなくなるのです。

太陽光発電事業主にかかる責任

再生可能エネルギー促進賦課金が売電制度を支えている

再生可能エネルギー促進賦課金とは、電力会社が発電事業主から高価格で電気を買うために、その資金を国民から調達するシステムです。
具体的には、皆さんが毎月電力会社に支払っている電気代に上乗せされています。
売電単価が高く設定されていることで発電事業者が増え、再生可能エネルギー事業の促進に繋がりました。
このための費用は、国民一人ひとりが賄っているわけです。
再エネ賦課金の推移は以下のとおりです。

年度 再エネ賦課金単価 家庭負担額
平成28年度 2.25円/kWh 675円/月
平成27年度 1.58円/kWh 474円/月
平成26年度 0.75円/kWh 225円/月
平成25年度 0.40円/kWh 120円/月
平成24年度 0.22円/kWh 66円/月

だんだんと国民負担額が上昇していることが見て取れるかと思います。
ではなぜ、賦課金額が上がり続けているのでしょうか。
それは、再生可能エネルギー事業の推進により、毎年発電事業主に支払う売電料が増え続けているからです。
以下は、固定価格買取制度の施行後、再生可能エネルギー事業の導入推移です。

年度 設備認定量
(/GW)
実質発電量
(/GW)
累計発電量
(/GW)
売電単価
(/円)
総売電料
(/億円)
累計売電料
(/億円)
平成24年度 20.0 14.0 14.0 42 5,880 5,880
平成25年度 65.6 45.6 59.6 36 16,416 22,296
平成26年度 73.4 52.1 111.7 32 16,672 38,968
平成27年度 75.9 54.3 166.0 27 14,661 53,629
平成28年度 78.4 56.5 222.5 24 13,560 67,189

(参考資料:太陽光発電協会(JPEA)『太陽光発電の現状と導入見込み及び 課題について』(PDF)

たとえ売電単価が下がっていたとしても、累計売電料は上がり続けていることが分かります。
もちろん、この金額がそのまま国民負担となっているわけではありません。

   

賦課金の算出方法

賦課金単価の決定方法は、毎年当該年度の開始前に経済産業省が決めることになっています。
(参考資料:平成26年2月16日資源ネルギー庁『回避費用の算定方法及び設備認定制度の在り方について』PDF)

賦課金単価
(円/kWh)
買取費用(円)-回避可能費用(円)+費用負担調整機関事務費(円)
販売電力量(kWh)

電力会社は再生可能エネルギーで発電事業主から電気を買った分、火力発電所を稼働させる必要がなくなります。
火力発電所の稼働には原料となる石炭が必要ですから、つまりこの原料を輸入する費用が削減されるわけです。
使うはずだった原料費を発電原価と言い、発電原価を削減できた分を「回避可能費用」として算出します。
こうして毎年計算された賦課金単価が、経済産業省認可のもと、国民負担として電気代に上乗せされる仕組みです。

  

再生可能エネルギー事業を推進する背景

ではなぜ国民負担を増やしてまで、再生可能エネルギー事業を推進するのでしょうか。
それは日本だけでなく、世界全体の環境問題に起因している取り組みだからなのです。

2007年のG8サミットでは、2050年までに世界の温室効果ガス排出量を50%削減することが論じられました。
現在、化石燃料消費による二酸化炭素排出量の半分強が大気中に蓄積され、濃度上昇が続いています。
温暖化を食い止め、気候安定化をはかるためには、温室効果ガスの大幅な排出量削減が必須の課題なのです。
こうした状況を鑑み、2016年4月22日に開催されたパリ協定の署名式では、175の国・地域が署名し、
下記のパリ協定を実施する政治的意思を示しました。

◆パリ協定 (気候変動)

産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑える。
さらに、平均気温上昇「1.5度未満」を目指す。

2050年実現に向けて、署名した各国は温室効果ガス大幅削減を実現するための戦略を、2020年までに提出することが求められています。
温室効果ガスの「排出ゼロ」を確実に実現していくため、G7諸国は率先して脱炭素化の長期戦略をとりまとめ、
率先して国連に提出する必要があります。
気温上昇1.5℃未満を達成するためには、世界の化石燃料埋蔵量のほとんどは、燃やさず地中に留めたままにしなければなりません。
G7諸国は、化石燃料、とりわけCO2や環境汚染物質の排出が最も大きい石炭から脱却する構想を練る必要があるのです。

しかし現状、日本はG7諸国でも突出した石炭火力発電所増設国です。
国内だけでなく、海外の石炭事業に資金支援をしているのも、日本がダントツのトップです。
国内外で石炭を燃やそうというこのような姿勢は、現在の国際情勢、とりわけ環境問題を解消すべく率先して行う先進国という立場を大きく逆行させています。
実際に、日本の2030年目標(2013年比で26%削減=1990年比で18%削減)は、「不十分(inadequate)」という最低ランクの評価をもらってしまっています。
日本は先進国として早急にこのような事態を是正する必要があるのです。
そのために国を挙げて推進すべき事業が再生可能エネルギーであり、国民負担を吊り上げてでも断行する理由がここにあります。

(参考:気候ネットワーク【プレスリリース】G7伊勢志摩サミット閉幕:気候変動・エネルギーに関するNGO共同声明 G7、人類の生存を脅かす気候変動に対処するリーダーシップを発揮できず

  

改正FIT法施行による新ルール

このような時勢の中、2017年3月23日、石油元売り大手の東燃ゼネラル石油と関西電力は、東京湾岸で計画していた石炭火力発電所を断念すると発表しました。
将来的に二酸化炭素(CO2)の排出規制が強まれば、採算がとれないと判断したのでしょう。
東日本大震災後、石炭火力は原発に代わる安定電源として新設計画が相次いでいたところ、新設の中止が決まったのは初めてのことです。
(参考:朝日新聞DIGITAL 石炭火力発電の新設断念 東燃と関電、CO2規制警戒

再生可能エネルギー事業の中で最も比率の高い事業は、言うまでもなく太陽光発電です。
リードタイムの短さと、初期コストの低下、安定した収益を得ることができるというメリットが先行し、事業主は増加し続けています。
しかし今後、火力発電に変わるエネルギー生産の基幹となるためには、何より発電量の安定化が求められます。
「雨が降ったから発電しませんでした」では困るのです。

  

改正FIT法【FITインバランス特例制度】

電力市場に安定した電力量を供給するため、経済産業省から発布されたのが今回の改正FIT法です。
発電事業主に、単なる投資目的ではなく国の電力受給を支える発電設備なのだという意識を促すため、その施行が急がれました。
安定した発電量を維持するためには、設備のメンテナンスや発電量の管理が不可欠です。
発電事業主は自分の設置した設備が、毎日毎時間毎分、どれだけの電力を供給できるかを報告する必要があります。
そして予想電力より実発電量が下回った場合、供給量への不足分を補填しなければなりません。
発電事業主は原則として、発電と需要による差(発電インバランス)が発生しないよう管理維持しなければならず、インバランスリスクにかかわるコスト負担をする義務があるのです。

しかし、今の発電事業主は冒頭でも述べた通り、サラリーマンや他業者の副業という方も多いです。
そのような事業主には、発電量の監視や供給の安定化など難しいのが実情です。
そこで現状、FITインバランス特例制度により、①一般送配電事業者②小売電気事業者のいずれかが、インバランスリスクを負担しています。
(参考:電力広域的運営推進機関『FIT特例制度を適用する場合の計画値同時同量制度について』PDF)

しかし注意しなければいけないのが、この特例制度はあくまで特例措置なので、いつ廃止されてもおかしくないということです。
そして特例が廃止された時、事業主の負担が大きくなる可能性を考慮に入れておかなければいけません。

《FIT特例制度①の概要》

   

《FIT特例制度②の概要》

小売電気事業者等が負担するインバランスの料金については、市場価格をベースに以下の式で算出されます。

インバランス精算単価
スポット市場価格と1時間前市場価格の30分毎の加重平均値 × 系統全体の需給状況に応じた調整項 各地域ごとの需給調整コストの水準差を反映する調整項

(参考:環境ビジネスオンライン 2017/3/22記事
   「2017年4月1日からのインバランス精算単価が決定 平均は6.41円/kWh」別窓)

   

スマートメーター普及工事の迅速実施

従来、発電所に設置されていた買電メーターは、月間の売電料を算出する目的で使用されてきました。
一般家庭にある電力メーターと変わらず、月1回の検針で1ヶ月分の総量を計測していたわけです。
しかしこれでは、日単位どころか1時間単位の発電量すら分からず、刻々と変化するインバランスに対応できません。

昨年4月の電力小売りの全面自由化以降、30分単位で「計画した需要量」と「実際の需要量」を一致させる「計画値同時同量」が求められています。
(参考:第10回電力システム改革専門委員会事務局提出資料『計画値同時同量制度について』PDF
    ネガワット取引に関する実務者会議資料『ネガワット取引(直接協議スキーム)に関する説明会』PDF)
今後小売電気事業者等は、30分毎の実需給の開始時刻1時間前までに電力需給計画を出さなければいけません。
そこで導入実施が開始されているのが、新型スマートメーターです。
このスマートメーターは、日々30分毎、1日48コマ分の発電量を計測することが可能です。


スマートメーター Wikipedia

今後、すべての発電所にスマートメーターが導入される見込みです。
同時に、申請手続きをせずに増設等により発電設備を改築し、申請上とは違う発電量を売電している発電所も摘発されていくでしょう。
スマートメーター導入と、このような不正設備を申請通りに改修させることで、市場に出る電力量を予測・管理できるシステムを構築するのが狙いです。

改正FIT法で義務化されたメンテナンスや標識の設置も、こうした背景のもと立案されています。
詳細な検針ができるようになったとしても、発電所に不備が起こってしまえば、結局は安定した電力供給は叶いません。
そして不正設備が発見された時、事業主に迅速な注意勧告ができるよう、標識に事業主の氏名と連絡先を明記させる必要があるのです。
「個人の資産に対してプライバシーは無いのか」というお声もありますが、前述の通り、太陽光発電は国の電力需給の基幹となる公共事業なのです。
個人の資産運用であるという考えから脱却しなければ、今後の再生可能エネルギー事業の発展はありません。
発電事業主のこうした意識改革こそが、改正FIT法に始まる今後のエネルギー政策の最重要課題となるでしょう。

   

まとめ

改正FIT法にて新たに追加された項目の中で、取り急ぎ発電事業主がすべきことは以下の通りです。

◆発電事業主が行うべきこと

1)事業計画書を提出する
2)発電所の周囲をフェンスで囲む
3)発電所に標識を設置する
4)事業計画書通りの発電量を維持管理するためメンテナンスを実施する

4)のメンテナンスというものを、「遠隔監視システムを導入すること」だと考えている方がいますが、これはメンテナンスの一部分でしかありません。
前述の通り、遠隔監視システムによる監視は、単に発電量の推移を見ているだけです。
この推移をきちんと把握し、発電量が落ちた時には原因究明し、さらに復旧・修繕を適切に行うこと、それにより事業計画書通りの発電を維持することが【 O&M:Operation & Maintenance(運用管理・保守)】なのです。

今後、メンテナンス義務化に伴い、多くの業者が発電事業主向けのメンテナンスプランを発表していくはずです。
しかし、すぐに飛びついて契約してしまう前に、メンテナンス内容や契約内容をよく吟味しましょう。
メンテナンス会社と設備を設置した工事会社が別会社の場合、メンテナンスによる修繕工事が入ることで、もともとの施工保証が切れてしまう可能性もあります。
施工会社の施工保証の年数と内容を、あらかじめ確認しておくことも大切です。
既に施工保証期間が切れてしまっているのなら、新しいメンテナンスプランを組む際に、修繕工事等にどれくらい費用がかかるかきちんと確認しましょう。

そして、今後の発電事業にあたり、こうした国の政策や今後の方針を理解している会社を選ぶことも重要です。
例えば、前述のFITインバランス特例が廃止された時、発電事業主にかかる負担を軽減できるプランニングができるかどうか等、きちんと知識をもってメンテナンス業者を名乗っているのか見極める必要があります。
将来的なリスクを踏まえて相談に乗ってくれる、20年間安心して任せられる会社を選びましょう。