太陽光発電コラム

【ネガワット取引】市場拡大へ向けて

2016.07.24

【ネガワット取引】市場拡大へ向けて

2016年4月からの『電力の小売全面自由化』に続く電力システム改革の取り組みとして、利用者が節電した電力量(ネガワット)を、2017年4月から小売電気事業者や送配電事業者が需給調整に利用できるようになります。
これを【ネガワット取引】といいます。
政府はこの【ネガワット取引】のルールやガイドラインを整備して、ガスの小売全面自由化と同時に開始する予定でいます。
「節電した電力量を取引するってどういうこと?」
「使わなかった電力をどうやって売買するの?」
こうした疑問やお問合せが多い中、今回はこの【ネガワット取引】についての概要をご案内したいと思います。

【ネガワット取引】って何?

ネガワットとは文字通り、電力量(ワット)の削減分(ネガティブ)のことです。
利用者が節電することで、本来使用されるはずだった電力量が削減し、その余剰分を他の電力供給に回すことができるのです。
このように電力会社からの要請を受けて、利用者が節電に協力することを「デマンドレスポンス」と呼びます。
「デマンドレスポンス」は電力需給逼迫時の対策の一つであり、これまでにも様々な手段が講じられてきました。

大きく分けると、《電気料金型》《インセンティヴ型》です。
《電気料金型》の「デマンドレスポンス」は、電力需要ピーク時の電気料金を割高にし、家庭や会社での電力消費を抑制するという方法です。
簡単に導入できる上、大多数に適用できるというメリットがある反面、利用者の反応に効果が左右されるというデメリットもあります。
「電気代が高いから節約しよう」と考えて、実際に行動に移してくれる利用者が大半を占めれば問題ありませんが、そうでない場合も考えられるため、効果は低く見積もる必要があるわけです。
これに対して、《インセンティヴ型》の「デマンドレスポンス」は、あらかじめ電力会社と契約を結んだ利用者が、ピーク時に電力会社からの要請を受けて消費を抑制し、その節電量に応じてインセンティヴを得るという方法です。
《電気料金型》とは反対に、契約を結ぶため効果は確実ですが、導入に手間がかかり、大多数に適用することが難しいというデメリットがあります。

今後の【ネガワット取引】導入

これまでも夏の昼間など、電力の需給状況が厳しくなった場合に、【ネガワット取引】が行われてきました。
節電分にプレミアムを付けて電気料金から割り引く方法が一般的でしたが、夏の電力不足を解消する対策が各方面で進む中、新たな電力売買の仕組みが始まろうとしています。
電力の需要が供給量を超えそうな事態が想定されたときに、電力会社が利用者に対して「ネガワット」を募集します。
利用者は節電できる電力量と希望単価を電力会社に提示して、条件が合えば買い取ってもらうことができます。
通常は「アグリゲータ」と呼ばれる仲介会社が間に入って、電力会社の要請に応じて一般企業が節電に協力する方法をとります。

一例として、大阪ガスの関連会社エネットが顧客企業向けに「ネガワット」の試行サービスを6月1日から開始しました。
対象は大阪ガスのガスコージェネレーションシステムを利用している企業で、大阪ガスから電力抑制の依頼を受けて応募する仕組みです。
エネットは企業向けに電力を販売する「特定規模電気事業者」の最大手会社です。
自家発電などによる電力を顧客に供給しており、気象条件などによって利用者の電力使用量が増加すると、電力会社と同じように供給量を増やす必要があります。
そのためのネガワット制度の導入であり、顧客側のニーズに応えた新サービスと言えます。
仕組みとしては、まずエネットが大阪ガスを通じて、デマンドレスポンスの依頼を顧客企業に伝えます。
これを受けて顧客側では、ガスコージェネレーションによる自家発電量を増やして、エネットからの電力供給量を減らします。
こうして生み出されたネガワットを、電力を必要としているほかの顧客企業に融通することができるわけです。
もしもネガワットを集めることができない場合、エネットは不足分の電力を追加のコストをかけて調達しなければならなくなります。

こうした新サービスの導入を受けて、東京電力もネガワットプランの提供を試みています。
ほかの電力会社も追随する見込みで、今後は全国各地でネガワットの仕組みが拡大していくとみられています。

【ネガワット取引】市場の創設

上記のような取り組みの中、経済産業省では【ネガワット取引】市場の創設を審議中です。
第三弾改正電事法において、ネガワット量を発電電力量と同様、供給力として取引できるよう、一般送配電事業者がインバランス供給を行うこととされました。
今後、拡大が期待される【ネガワット取引】は、これまでのような一般電気事業者や新電力等と利用者との二者間で行われる取引ではなく、小売電気事業者等と利用者との間に専門の第三者(ネガワット事業者)が介在することにより、家庭も含めた多様な利用者を対象として、幅広い小売電気事業者等が取引できるものであると考えられています。
こうした取引が幅広く行われるようになるためには、取引の具体的内容や責任分担等について、ルール整備を行う必要があります。
そのため、法律に位置付けられた【ネガワット取引】について、その定義や、ネガワット事業者に求められる規律、節電を行う需要家に電気を供給する小売電気事業者との間で設定されるべき各ルール等について、これまでも議論が進められてきました。
平成28年7月1日に開催された第七回電力基本政策小委員会において、【ネガワット取引】に関する全体方針として、事業者の創意工夫を通じた多様なビジネスモデルを許容し、事業者及び利用者の参入障壁を排除することとされました。
具体的には、下記の9項目についてルール整備が急がれています。


現在、電力・ガス取引監視等委員会の制度設計専門会合において、調整力公募に際して、予め公募要領として公表すべき事項や、適切な契約条件等についての検討を進めており、公平な条件の下で、ネガワットと電源の参入を可能とする方向で動いています。
小売電気事業者とネガワット事業者との協議が公平に進められるよう、事業者間での規律やルールの制定を行うべく、【ネガワット取引】についても、政府による適切な情報収集が行われる必要があると考えられています。
これを踏まえ、今後の課題は、いかに適切な情報収集ラインを確保できるか、【ネガワット取引】に対するより公平なガイドラインの制定が必要となってくるでしょう。
2030 年度までに、先行的に【ネガワット取引】が普及している米国と同水準(最大需要の6%)のネガワットの活用を目指すべく、市場拡大へ向けて今後の動きに注目です。